なんと出がけには激しい雨と雷。皆が車に乗った途端、「帰ったほうがいいんだ。帰るが勝ちなんだ!」と利用者のTさん。「勝ち…?負け…?」と考えていると、今日は花火が上がると連絡が入った。「Tさん花火上がるって!車の中でも良いんだ。行こう!行こう!」スタッフの勢いに押され、車は目的地に向かって走る。すると、花火の打ち上げ場所に近づくにつれ、不思議と雨も小降りになる。
いざ花火が打ち上げられはじめると、なんと雨が止んだ。それぞれの車内でデイサービスで収穫された枝豆や準備したおやつを広げながらの見物。さっきまで「帰ったほうがいいんだ」と心配そうにしていたTさんも、花火が上がると「ほ〜っ、キレイだなぁ」と笑顔を見せ、他の誰よりも一番楽しんでいる。もう一人、出がけに「行がなくていい!腰痛ぇ!」と厳しい表情で嘆いていたSさんも「ほぉ〜、上がってら。花火は仏さまのためにあげるんだよ。お盆には毎年上げるものなんだよ」と切々と語る。来て良かったと、スタッフも花火とその笑顔に見とれている。それらが自分にとってはものすごく印象的だった。
数日後、私は地元の花火を見た。にぎやかな屋台、ガンガンと響くDJのけたたましい声…。私は、今年初めてそれらを邪魔と感じた。そして、Sさんの「仏さまのためにあげるんだよ」というあの言葉を一人静かに思い出していた。