2014年01月15日

ケアマネジャー更新研修を受講して ★ケアマネジャー 板垣由紀子【2014年1月号】

 早いもので、ケアマネの資格を取って5年になる。更新研修は資格取得後5年ごとに義務付けられており、自分が担当した事例を持参し、グループワークで事例検討が行われる。今回の研修講師の白木氏は、元看護師で、介護保険制度施行と同時にケアマネになりパイオニアとして活動してきた方だ。「これからは、暮らしを考える時代です。障がいだろうが、ホームレスだろうが、DVだろうが、何に対しても、ニーズを発見し社会資源を構築していくことが大事です。高齢者=介護保険パッケージがケアマネの仕事と思ったら大間違い。縦割りの行政に横ぐしを刺すくらいの覚悟が必要」と熱く語り、聞くものを圧倒する。ケアマネの礎を築いてきた人の言葉は、説得力がある。この仕事の奥の深さと未来への広がりを感じた。
 私の提出した事例は、「認知症の独居の方が、なんとか自分の家で暮らし続けたい」という希望に添えるよう、暗中模索した内容のものだ。このケースで初めて私は、成年後見制度や権利擁護に取り組み、この方は生活自立支援事業の活用で今も独居を継続されている。遠方に住む家族に状況を理解していただくため何度も連絡を取ったり、本人にサービス利用の意図を伝えて理解してもらったり、社協や市の福祉課担当者への橋渡し等、利用になるまでの調整に時間がかかった。本人の了解も大変だったが、遠方に住む家族との行き違いがかなりあった。地理的な距離の問題だけではなく、ケアマネとしてなにが足りなかったのか、振り返りをしておきたかった。
 事例は私なりにまとめたはずなのに、いざ発表となると、どこから話して良いかわからなくなってしまった。簡潔に要点を絞って人に伝える難しさを感じた。事例検討は、「世間話にならないように一問一答で事例を深め、感想は言わない。事実を伝える」と指導があったのだが、これがなかなか難しい。ここは司会者である主任ケアマネの腕の見せ所だ。主任ケアマネは、ケアマネジャーの上位資格で、ケアマネの実務経験を5年以上有し、専門の研修を受けたケアマネだ。地域包括ケアの要となる存在で、地域包括支援事業所に配属が義務付けられ、居宅のケアマネの相談指導・地域の課題抽出から地域包括ケアの構築を役割とする。この研修は、主任ケアマネにとっては地域で事例検討を開くための、ファシリテーターとしての研修が含まれていた。新人研修が、仕事のイロハとすると、この研修はステップアップ研修になる。一つの事例検討から、事例研究へ、研究から地域の課題の発見と地域包括ケアの構築のため社会資源をどう作っていくか等、机上の講習で終わらない。地域がかなり意識された実践研修だった。
 二日目は3事例を選び、全員で事例を検討した。

【包括支援センターのケアマネはどこまでが自分の仕事か?】
 地域包括ケアセンターのケアマネからの問いは、自分の仕事の範囲を区切ろうとする意図が見えて取れた。それに対し白木氏は「どこまでが仕事かというなら全部です!どれだけ、のりしろを広げ、多職種と連携を取って、地域つくりをしていくかが本来の役割です!」と、きっぱり言い切った。それくらいの意欲と、覚悟がなければ、認知症高齢者が増え、現役世代の失業や、うつ病、子供の不登校等、多重に問題を抱える困難ケースが増える時代に、縦割り感覚では全く役に立たてない。国は、介護保険事業の運営を市町村単位に任せていく方針だ。市町村の取り組み状況によって、地域格差が出ることは否めない。ケアマネは、安心して生活できる地域作りを全面的に担っているという自覚が必要だ。さらに、白木氏は「これからの地域作りに必要なのは、支援者同士の連携です。事例検討は、高齢者も障がいも混ざり合い、共に学び合っていくことのためにも大事です。障がいだから、高齢だからと分けてはいけないのです。事例検討を通して、事実を把握し、チームで支援していくことが求められています。」と話す。のりしろを広げていくのは、何も地域包括のケアマネに限ったことではない、第一線で家族の相談を受ける居宅のケアマネにそうした姿勢がなければ、連携も包括ケアも進んでいかない。縦割りや仕事を区切る今の壁を越えるために、私に必要なことは、ケースを読み解く力と、めまぐるしく変わる制度の理解、地域の社会資源の把握、柔軟な活用、そして関係機関に共通言語で伝えていくことだ。今回の研修には、管内の関係機関ケアマネも多く受講しており、地域作りへの共通認識ができたことで、これからの連携の起爆剤にしていきたいと思う。

【同級生を担当したケース】
 印象に残った事例だったので紹介したい。
 事例提供者のケアマネが、家族との関係が薄く一人暮らしを続けていた同級生と、入院している病院で再会した。個人的な「何か力になりたい」という思いもあって、担当を引き受けた。「最期は入所先の施設で亡くなられたが、自分がケアマネと友人という立場で揺れ、本当に良い支援が出来たのか振り返りたかった」ということだった。詳細にはふれられないが、同級生だった友人としての立場から、幼いころの生い立ちや家族関係まで語ることで、その人の人生が見えてきた。講師の白木氏は「ケースにとって友人であるケアマネとの1ヶ月のつきあいは、大切な時間だったと思う。生きる目的を見失っていたとき、伴奏者として向き合ってくれる、大きな存在だったのではないだろうか」と語った。事例検討は担当ケアマネ自身のグリーフワークにもなり、参加者も共に体験した。同級生という特異ケースと言えなくもないが、そこに本来の対人援助の本質を感じた。背景を知り、人間として向き合う。「何か力になりたい」という気持ちが支えになる。人生の伴奏者というスタイルは、私が大切にしていることの一つでもある。
 少子高齢化など地域の時代変貌は危機的な状況にある。そうした時代にあって、まさに福祉や医療の現場から福祉行政を巻き込み地域を作っていく必要がある。医療現場出身の白木氏が「暮らしを作ること」を冒頭で話した。そこには「掛け替えのない人生」を尊重する姿勢が感じられた。
 今回の研修では、私自身のケアマネとしての技術的な課題が明確にされた。またケースと向き合うことは、揺らぎ、悩み、考え続けることだと覚悟することができた。「人生の伴奏者」のケアマネとして任を果たしていきたいと思う。


posted by あまのがわ通信 at 00:00| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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