そのうち何を思ったか突然「Kさんにも一つやるがなぁ。持ってってけねが?」と言うので私は驚いた。Kさんは同じグループホームの入居者だが、今年に入ってから病気がちで、部屋で過ごすことが多く、以前のようにリビングにでてみんなと過ごす機会は減っていた。そんなKさんを気遣ってなのか、Fさんのその思いやりに、私は驚きながら胸が熱くなった。
これは是非ともKさんに届けなければと思って部屋から出ると、他スタッフからKさんはパインが嫌いだったはずというので困った。一瞬迷ったが、どうしてもFさんの気持ちを届けたく、Kさんの部屋へ持って行った。
私の心配をよそに、Kさんはとても喜んで、パインもほとんど平らげてくれた。確かにパインは好きではないのかも知れないが、Fさんの気持ちを受けとめてくれて、おいしそうに食べてくれるKさんがいた。
二人は直接言葉こそ交わさないものの、気持ちの繋りを感じた出来事だった。しがらみや監視社会のプレッシャーとストレスがきつくなるばかりで、ほっとしたり、胸が熱くなるような話は世間からは急速に無くなりつつある。グループホームに昔の地域の、ご近所の関係、助け合い、いたわりあいの精神が生きづいていくとといいな。私もここでそんな関係を生きていけたらいいなと思った。