2010年04月15日

特養、焼き芋三昧! ★特養 中屋なつき【2010年4月号】

 冬の間は石が売れないから焼き芋屋に変身して食いつないでいる…という石屋さんが特養に焼き芋の営業に来た。3時のおやつ時なら食べたい人もいるかも…と、販売に来てもらう日程を決めた。前もって申し送りでもユニットへ伝えて、利用者さんの顔を思い描き、みんなで楽しみに待っていた。  当日、「♪いぃしや〜きいもぉ〜♪」のアナウンスと共に、赤提灯の軽トラが特養玄関前にやってきた。「お、来た来た!」と事務所の瀬川さん。玄関に案内してスタンバイしてもらう。各ユニットを回って知らせようかとも思ったが、「よし、あえて館内放送してみっか?!」と思い立ち、特養初めての全館館内放送『ピンポンパンポーン♪』『皆さんに嬉しいお知らせです! ただいま正面玄関に焼き芋屋さんが到着しております。食べたい方は、ぜひいらしてください。いい匂いがしてますよ! ピンポンパンポーン♪』
 さぁ、誰が来るかな?! とワクワクして待っていると、一番乗りは車いすのスギさん(仮名)とつきそう勝己くん。試食を味見して、スギさんは「おぉいしい芋だなはぁ♪ んで、1本いただくかなぁ」とニッコリ。でも値段を聞いて、「1本350円?! んで、わがね、半分だけだ!」と慌てて眉間に皺をよせる。すると、慌てて芋屋さん、「一番おっきいやつ、ホントは500円くらいほしいところだけど、350円にすっから!」
 結局「みんなで食うには半分じゃ足りねぇもなは」とおっきいのを丸ごと1本買って、3本で1,000円にまけてもらった勝己くんも一緒に大喜び。
 そうこうしていると二番手が到着、洋治さん(仮名)が前川さんと一緒にトコトコやってきた。すでに顔がニコニコと赤くなって、洋治さんが焼き芋みたい!「じゃじゃじゃ〜、頼む頼む、おれの銭っこ、あるってか?」事務所の金庫から、預かっていたお小遣いを急いで持って行くと、「さぁさささ〜、いかったぁ、ありがとぉ!」と両手をこすり合わせてニッコニコ。紙袋に入れて手渡された焼き芋を「ん、んっ!」と引っ張り出して、ガブリッ! 皮も剥かずにかぶりついた。目が真ん丸になって「んんんっ!」と唸りながら食べているから、喉が詰まったのかと一瞬焦ったけれど、「んめんめぇ!」とニッコリ。ホッとして「私にもちょうだい」と目の前で口を開ける前川さんと私の姿は目に入らないかのように集中して食べていたが、後で二人に気がついて手でちぎって口に入れてくれた。
 さぁて、いよいよ大勢が集まって来た! 廊下の奥から続々と車椅子の列! さすが、食いしん坊リーダー小松さんの率いる“ユニットこと”の奥様方。人垣で一気に賑やかになる玄関、預り金のやり取りでてんてこ舞いの事務の瀬川さん。看護師の高橋さんも様子を見ていたが、「えぇっ、トミさん(仮名)も買うのぉ?! いっつも胃もたれだぁ、具合悪い、って泣いて言う人がぁ?!」と、心配半分、可笑しさ半分で笑っている。そうとは知らずに、熱々の芋をまるで赤ちゃんでも抱っこするように大事そうに抱えて、ホクホク顔のトミさんだった。
 さあ、次々と焼き芋が売れていきます! 少し遅れてやってきたのは、なんと経管栄養で普段は寝たきりのコズエさん(仮名)。部屋で放送を聞いて「買うぞぉ〜!」という気持ちになったよう。「コズエさん、すごいんですぅ、4本買うって言ってるんです〜」と笑いながら付き添いの大坪さんとやってきて、車椅子の上でニンマリ! だって経管栄養だよ、コズエさん、芋、食べるんすか?! いや、凄いねぇ… とみんなで驚いているところへ、ちょうど娘さんが面会で玄関でバッタリ、娘さんも「は?4本?!」と驚くやら呆るやらで笑っている。
 一方では、玄関まで来たのに「私はいりません」というミエさん(仮名)、歩き食いしていた洋治さんとすれ違いざまに「それそれっ」と一口かぶりつくように勧められても、「私は食べません」と笑顔で応えている。
 「あと4本しかないよー!」焼き芋屋の兄さんが声を上げた頃、ちょうど中屋の携帯が鳴る。出てみたら西野さん(仮名)だ。「1本買っといてくれ」だって。ショートステイ中ですぐそこの部屋にいるのに電話かよ。しかも、微熱があるから食欲ないんだよなぁ…、とかってご飯食べないでいた人が、芋は食いますかい。とりあえず1本買って持って行くと「まだ暖かい、いい匂いだなぁ」と嬉しそう。食欲戻ったようだ、よかったね。
 玄関に戻ると、賑わいの波が引けて、飛ぶように売りきれて、ホクホク顔の焼き芋屋さんも帰り支度。各ユニットでは焼き芋三昧のおやつタイムで盛り上がっていた。

 夕方、トミさんが小松さんと事務所にやってきた。「あら、どうしたの、トミさん、」しかめっ面…。「わがね、おれ、胃もたれだぁ…」小松さんも「トミさんだけじゃないんですよ〜、“こと”のみんな、食べ過ぎてお腹いっぱい、夕飯も一時間遅らせてるんです〜」と笑いながらの報告。「笑い事でねぇ、ほんっとに具合わりぃ…、泣き真似さねばねぇっちゃ…」と苦笑いのトミさん。看護師さんの予感はみごと的中した。
 歩き食いしながら前川さんと中屋の開ける大口に交互に一口ずつ食べさせてくれた洋治さんだったが、後から聞けば“すばる”でも、他のスタッフにも分けて歩いたとのこと。横で「私にも、私にも」と待っている和枝さんをよそに、「男が先だ!」と雄くんに一生懸命勧めていたそう。それが手でちぎってスタッフの口に入れ、そのちぎった自分の指についた芋をベロリと舐めては次のスタッフへひとちぎり…とやるもんだから、やっと自分の番がきた和枝さんも「う…、…」と少々抵抗が働いたそうだが嬉しくいただいた…、なんて出来事も聞こえてきた。大いに笑わせてくれた洋治さん、焼き芋そのもののようなニコニコ顔だったが、そういえば夏のスイカ屋さんが来たときには、まるでスイカのように真ん丸な笑顔でスイカを頬張っていたなぁ。いやーぁみんなすごい食欲を見せてくれた焼き芋やさんの出前だった。


posted by あまのがわ通信 at 00:00| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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