2010年09月15日

ハエ叩きで大盛り上がり ★特養 中屋なつき【2010年9月号】

 ユニット“すばる”でのある日の夕食後…。すでに何人かは眠りについていたが、リビングには祥子さん(仮名)、真澄さん(仮名)、シサさん(仮名)に華さん(仮名)、邦恵さん(仮名)の女性陣が食後のひとときをまったりと過ごしていた。隣では広周君が日誌の記録をしていた。そこへ私も腰掛ける。
 みんなで他愛のないお喋りをしていたら小うるさいハエが気になった。
「ハエ一匹叩いたらなんぼ、って決めたら、みんなして頑張って叩くよぉ」と祥子さんが言ったので、「お、そういうんだったら確かに頑張るかも」と広周くん。そこで私はハエたたきを持ってきた。
 さぁ始まったハエ叩き大会!このやろ、このやろとハエ叩きを振り回す私を見て笑う祥子さん、キョトンとする邦恵さん、「ほに、いんだ、いんだ」と呟いて応援してくれる華さん…。
 「あれっ?! どこ行った?」
 「こっち! ここ、ここ」
 「いた、いた!」
 「あっ、とまった!」
 「今だ!」パシッ、…空振り。
 「あはは〜、はえぇっけもん」
 「はえぇからハエだ〜」
 何度か外し、やっと一匹叩くと「わぁ、やったぁ!」と盛り上がる。すると次なるハエがやって来た。
 「おめさん、早く食べてしまうんだぁ。ごっつぉ、狙われてらよぉ」とシサさんに話しかける祥子さん。シサさんの前にはまだごちそうが並んでいる。寄ってくるハエを無言で払いのけてはいるけれど、もう食べる気はないみたい。それまで静かに見ていたシサさんが、自分の真上の天井の一点を指差しニヤリと笑った。「あ、天井にとまってる!」と広周くん、指差して「ほら、見て見て、邦恵さん!」キョロッと見上げる邦恵さんも面白そうにニッコリ。
 届くはずのない高さだが「よぉ〜し…!」と構える私を、みんな息を凝らして見つめる。そこで「ぶふっ」と吹き出してシサさんが「無理なんだぁ」とニコニコしながら手を振り振りしている。ジャンプしてハエ叩きを振り回すと「ふふふ」と笑いながら、「ダメダメ」とシサさん。
 「そうだよね。しとめちゃったらシサさんの上に落ちてくるもんね」
 「電気も割れちゃうかもしんない」
 「やめといた方がいいよぉ」
 周りからもいろいろ声が飛び交う。ハエの方も方々へと舞ったりまた飛んで行ったり。目の前のテーブルに来たら「バンッ」と手を出す邦恵さん、「おしいー!」と広周くん、「ほぉ〜!」と華さん。
 「昔はね、ハエなんか、こうやって叩くどころでなかったんだよ。いたるところ、そこらじゅう真っ黒だったの」祥子さんの昔話も始まる。

 気がつけば20〜30分ほども経っていたか、みんなで一盛り上がり。「じゃ、おやすみなさい」とそれぞれ部屋に入って行く。最後に残ったシサさんに「ハエたたきで盛り上がったね」と笑うと、シサさんも「うふふ」と笑みを浮かべ天井を指差してくれた。
 こんなさりげないやりとりの時間に満ちた特養のユニットでありたい。そうした場のなかに個性も現れ表情もみえてくる。出てくる表情や人柄でお互い癒され支えられる。硬い顔して介護介護で追われる空気では利用者もスタッフも辛くなる。


posted by あまのがわ通信 at 00:00| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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