それでも今年は17歳の渉君が畑班に加わり、ベテラン・広一さん(仮名)とのコンビでトラクターなど機械作業をやってくれるので、僕は全体を見て段取りなどをやれるので助かっている。二人は年齢差こそ3まわりも違うけれど、農業が体に染みついる感じで現場を引っ張ってくれている。生まれ育った土地や訛りは多少違えど、お互いに生活の労苦や「土着」をもっているところが合うのか、二人とも茶目っ気があり、現場が賑やかになるところも功を奏している。
渉君は、17歳の若さとしては希少種級の働きぶりだ。まだ知り合って間もない頃、彼が自宅で牛の面倒を見ているというので見に行ったときの鮮烈さは忘れられない。自宅の裏山の草地でロープで牛を引っ張る若者の姿は、僕が沖縄の離島で暮らしていたときに見た光景と重なり、働く男の逞しさと優しさが自然や暮らしに溶け込んでいて、都会育ちの僕に欠落しているあこがれの姿を目の当たりにして嫉妬すら覚えるほどだった。
当初は無口で人見知りの強かった彼も、1年たったいまは、働く仲間の中心にいてワーカーさん達と馴染み、いざこざがあったときなどは素早く間に入り、逞しく欠かせない存在となっている。
もち米の田んぼは、昨年に引き続き特養の若手女性メンバー「もち米ガールズ」が担っている。イベント的になってしまった去年の反省を踏まえて自主的に任せることにしたのだが、本人たちも見守る側もなかなか大変である。
水尻をとめないで(栓をしないまま)水を入れてだだ漏れになっていたり、プール育苗にも関わらず水が枯れて苗が枯れそうだったり‥‥。すぐに質問してきて、自分たちで考えたり人の作業を見て盗みながら学ぼうという姿勢はない。自分も同年代の頃を思えば、似たようなものだったのだが‥‥。介護の傍ら、やったこともない(もしかしたら関心もなかった)農作業を自分たちでやるのは大変だろうが、種が芽を出し田に植えられて穂を出すその姿や育てる労苦は、生きることやいのちと向き合うことであり、自然の恵みの豊かさに感動や充実感を感じてもらえたらと思わずにはいられない。
今年の田植えは、早朝から20名を超える職員が手伝いに集まってくれた。なかなか発信ができない自分に代わって、先輩たちが若手を誘い、多くの人が自主的に集まってくれた。いつもは早起きが苦手なGHみつさんちのメンバーも、昨年運転免許を取得してワークに復帰した星崎くん(仮名)も遠くから、遅れることもなく集合してくれてビックリした。おかげで稲の苗をハウスからトラックに積んで田んぼ1枚ごとに必要な枚数を置いていく作業は驚くほど速く運び終わった。田んぼ班は早朝から、植える作業に取りかかり、りんご班は午前中のうちにりんごの摘果作業に向かった。夕方になっても東條君(仮名)や拓真さん(仮名)は自分から居残りを志願して、日没まで共に作業に関わってくれた。
銀河の里の周りでも、耕作が放棄されたような田んぼが至るところにある。
多くの零細農家と同様に銀河の米だって、作るより買ったほうが安いのかもしれない。
それでも田んぼを続けることは、自分たちの糧を得て暮らしやいのちを守るもの、いのちを育みつないでいくこと‥‥それをコトバじゃなく、童心にかえったように、ワクワクしながら共に感じていきたい。