2013年01月15日

ケアマネ日記 ★ケアマネージャー 板垣由紀子【2013年1月号】

 暮れに車をぶつけてダメにしてしまった。幸い怪我はたいしたことはなかったのだが、通勤の足を失い、しかも先立つものがない・・・・。すっかりめいった。理事長に相談するととりあえず里の車を使えるようにしてくれて「10年乗った車だったから買い換え時だと思って車を探せばいい。買い物を楽しめば」と言われて気持が切り替わった。「お金は???何とかなるか」そう思えた。そこで子供達も誘って早速車種選びを始めた。いろんな車に乗ってみる機会なんて滅多にないとお店に出かけた。子供達とも結構楽しめて、乗りたい車も決まった。新年の初売りだと値引きできるというので、正月を待った。事故の後処理で追われながら、仕事も年末で忙しかったが、どこかゆとりを取り戻せて仕事ができる自分がいた。
 ところが、年が明け初売りでディーラーに出かけたら、話が違ってこれができない、あれもダメというので、一気にワクワク気分が吹き飛んでしまった。営業マンにとってはその通りだったのだろうが、こちらはだまされた感じで、当初の思惑よりも高い値段で契約する羽目になってしまった。家に帰って支払いの計算をやり直し「仕方ない」かと思って寝た。ところが翌日出勤してからなんだかモヤモヤして仕方がない。新車が来るのを楽しめないし、メンテナンスでその店に行くことさえ嫌になる感じだった。後で思い起こすと、ディーラーの体質が厳しいのではないかと感じる所があった。担当の営業マンは新人で慣れておらず、戸惑いもあっただろう。ただその担当が対応に困ったとき、誰もサポートしない感じがあった。一対一で嫌な空気のなかに置かれ、いたたまれない気分になった。営業の世界ではお互い孤立しているのだろうか。担当から見れば数売るうちの1台に過ぎないのかもしれないが、こちらにとっては、ライフプランと重なって、大きな買い物だしメンテナンスでのおつきあいも続くのだから、人との信頼が欲しい。少しくらいなら高くてもかまわないから他で買うという気持ちにまでなってキャンセルの電話を入れたら、留守電で3日間休業だった。3日後、店長に電話を入れると、店長の対応は真摯で「お客様の声を店舗で伝え今後の勉強にさせてもらいます」とのことだった。新人のスタッフにはがんばって欲しいと伝えると、「そういってもらってありがたい」と言ってくれて、モヤモヤが消えた。
 私のデスクは、銀河の里のデイサービスの傍らにある。そのことは一人職種ながら孤立しない大きな理由かもしれない。ある日、私が訪問に出かけようとすると、デイホールでは恒例のおやつ作りの最中だった。テーブルにカセットコンロが置かれ、リンゴを煮ていた。スタッフは他の準備に追われているようだった。そのスタッフを尻目に、今にも煮立った鍋に手を突っ込んでリンゴを食べてしまいそうなチサトさん(仮名)がいた。準備に必死のスタッフと、そんな事情にはお構いなしでリンゴを狙うチサトさん。このスリリングな場面に遭遇してしまったので、私は思わず遊び心が湧いて「チサトさ〜ん」と声をかけた。すると「こいづ何や?」と返ってきた。「3時のおやつだよ」(残念見つかっちゃたね)という思いで、お預けの声をかけると、チ)「何??名物?なんぼや」ときた。チサトさんは見事な聞き違いで話が展開していく。「ただだよ」と私は応える。すると「ただの名物だってがぁ〜」と来る。「う〜ん、これから名物になる??かもよ」とこっちも調子に乗る。「んだってがぁ〜俺食っていいのが?」とやってるとスタッフが戻ってきて「うん、美味しかったら近所でみんなに話してね」と会話にのっかってきてくれる。「んで、一ついただく」とチサトさん、「一つでも二つでも好きなくらいどうぞ」とほっこりとした気持ちに場が和む。その暖かさに送りだされ訪問へと向かった。
 このエピソードを思い出しながらいろいろ考えた。一対一の緊迫感…事故と私・車の営業マンと私・スタッフとチサトさん。一対一で重い空気になったとしても、そこへ誰か第三者がはいることで救われることがある。そこにはシステムやマニュアルでは語れない何かがある。それは、人の心に関わることだろう。だから、遊びの発想や、常識に囚われない柔軟な心が、人と人との関係性の中で大事になってくる。手段だけで物事を考えない柔軟さと幅の広さが大切になってくるのではないだろうか。
 同業者から「一人ケアマネって大変でしょ」と言われることがある。私の場合は一人でケースを抱えて困ったということは一度もない。どの部門も積極的に相談に乗ってくれるし、毎月の居宅会議も施設長とデイサービスの主任、特養の副施設長が参加してくれる。会議だけでなく日々のやりとりで、かなり状況を理解してもらえている。ケースの話をいつも外さずに聞いてもらえるのは、銀河の里では部門を超えて、ケースに対して共通の理解があるからだ。サービス提供のみに終始するのではなく、その人の置かれた環境と暮らし全体をどう考えていくかが根底にある。サービス提供はそのほんの一部にすぎない。わざわざつまらない仕事にするのは愚かだ。繋がったり支えられたりしながら、クリエイティブでワクワク感がないと仕事はつまらなくなると思う。世間ではどうやらそうではないことが多いようだ。




posted by あまのがわ通信 at 00:00| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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