2013年01月15日

今年もよろしくお願いします ★理事長 宮澤健【2013年1月号】

 通信の内容が段々マニアックになってきた感があって誰にでも読んでもらえるものではなくなってきたような気がする。それでいいものか数年前から悩んではいるのだけど、勢いというものもあって確信犯的にもうこれで行こうと突っ走ってきてしまった。あまりに長い文や、訳のわからない論の展開に閉口している方もあるのではないかと、申し訳ない気持ちもあるのだが、気づいたり感じたりしたことはある程度表現して伝えたい気持ちが抑えられないところがある。
 6年ぐらい前、他の施設の管理者の方に通信の感想を伺ったところ「字が小さい」とのことだった。それからしばらくは字を大きくしようと努力した時期もあったのだが、それもむなしく、当時と比べて、今はさらに半分ぐらい小さくなってしまっている。機内誌の企画もしているコーディネーターからは、写真を多く大きくして、文章は少なくするのが基本だとして、「商品を送るときには通信は入れないでくれ」と言われてしまう始末だ。そんなだからもう誰も読んでくれないものと覚悟していたのだが、去年は案外いろんなところから好意的な反響をいただいた。いつも全文を熟読していると言われるカナンの園の菅生さんは毎月のようにメールで感想を送ってくださる。昨年6月に研修で行った鎌倉で偶然ご縁ができてお世話になっている『くずきりみのわ』」のオーナーさんも通信を楽しみにしていただいている。各方面に配っていただいて、新潟のお知り合いからはお葉書をいただいたりした。そんな応援があったりして、余計に図に乗って字数多くなり字が小さくなってしまったかもしれない。
 11月号から書いているように、今年の10月にグループホーム協会の全国大会が盛岡で開催される。これを契機に、数は整備されたものの、「安かろう悪かろう」状態の日本の福祉の質をなんとかしなければならないという危機的な切羽詰まった状況に追い詰められて、通信にも余計に力が入る傾向になっている。また、グループホーム銀河の里の10年の経験と蓄積を、特養ユニットケアに活かしてみたいと開設した銀河の里特養も、3年目にして体制がかなり整い、里らしい物語を生み出せるように育ってきて、特養スタッフの原稿も長文になる傾向にある。
 わかりやすさ、読みやすさを意識しながらも、現場の具体的なエピソードを具体的に、意味ある形で伝えていく使命もあると考えているので、これからも現場の実践と平行して、通信もがんばっていきたいと思う。
20年以上前に、東京の板橋で障害者更生施設で同僚だった渡辺由美子さんから年賀状代わりのお手紙をいただいた。毎月送ればいいのだが、夏と冬に2回にわけて通信をお送りした。こんな分量が半年分届くのも迷惑な話だと思うが、彼女は全文を読破して感想を送ってくれた。夏に半期分を読んで感想文を書き始めたが、半年かかってしまい、後半、半年分が12月に送られてきたので、総決算の感想文を書いたということだった。時間がかかったのは、通信を「あだやおろそかに」扱いたくない気持ちがあり、しっかり読み込んで理解して感想を書きたかったと言ってくれているのはとてもうれしい。彼女がある種見えない力の導きを感じたというのは、通信で話題にした、泉鏡花、世阿弥の能楽、松井冬子、ピナバウシュのそれぞれに彼女も同じ時期に触れていたからだ。偶然の一致と言えばそれまでだが、メデイアに登るピナバウシュや松井冬子は重なったとしても、鏡花や能まで符合するとは驚きだと言うわけだ。彼女はそれぞれについて論じたいところだが、今回はそれらすべてに共通するエロスについて書いてくれた。彼女の定義によるとエロスは「人を恋うる気持ち」なんだそうで、文語で言う方がぴったりくるらしい。それは人に限定しなくてもよくて、なにかにつながりたい気持ちじゃないかと言う。
 ここから便せん7枚の展開が独特でおもしろくて楽しかった。彼女は坂口安吾を高校時代から読んでいて、この数ヶ月、また読み返しているのだそうだ。無頼派と呼ばれ、破天荒な人物とみられがちな安吾には、狂気と紙一重ながら、他の人にない、「人をよきものとして(自分も他人も)信じ恋いふる気持ち」が根底にあることを今回読み返して感じたという。三千代夫人の書いた『クラクラ日記』が大好きだというので、早速取り寄せて読んでみると、確かに二人の、「人を(他人も自分も)よきものとして恋いふる」たましいの清らかさが感じられる。メチャクチャなんだけど、なんて尊いんだろうと感じさせる人間がそこにある。
 渡辺さんは、おおらかで度量の大きい男という印象の安吾が、三千代夫人に対しては狭量でひどいこともしていて「なんだこいつは小さな男だなあ」とますます好きになると言う。そして、世間からみればアホで幼稚でメチャクチャな三千代さんが、どれだけ安吾を癒やしていたかを思い知るとして、本当にステキな人だと言う。
『クラクラ日記』には、当時の多くの文人が登場する。小林秀雄や青山二郎なども出てきて、それだけでもわくわくさせられる。精神的に病んだ安吾が暴れて入院したとき、小林秀雄がお見舞いに来る場面がある。小林は「テメエは大バカ野郎だ」と十何回も叫ぶ。安吾のわがままに苦労させられているので最初は「ざまあみろ」と思って聞いていた三千代さんも、薬でもうろうとして口がどもってしまう安吾がしゃべろうとする度に「テメエは大バカ野郎だ」とかぶせるのでかわいそうになったと言うのだが、それが小林さん流の友情だったと書いている。これには感動する。きれい事や作り事ではない、震えるたましいそのもので「テメエは大バカ野郎だ」と怒なる小林秀雄がすごい。二人の関係がいい。
 渡辺さんは学生時代、京都と東京で能をたくさん見たそうだ。しかも自身も謡と仕舞いをやっていたという。「今は福祉の現場からは離れているけれど、通信を読んで、知性、感性、いろんなものを総動員して取り組む、なんとスリリングな魅力にみちた現場だろう」と評してくれている。
 私としては、このところ知性も感性もまるで足りなくてガス欠気味だが、こうした刺激をもらえるとまた、燃料満タンで走れるような気がしてくる。今年は全国大会の開催など大きな勝負もあるので、いろいろ吸収したり考えたりしながら臨んでいきたい。


posted by あまのがわ通信 at 00:00| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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