2010年07月15日

今月の書「糸」 ★特別養護老人ホーム 山岡睦【2010年7月号】

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向き合って互いの心を通わせる

1本じゃ細くて弱い
2本になれば強くなる

重ねていく
綻びを縫う

引く力が
強いと切れてしまうし
弱いと緩んでしまう

その力加減
そのバランス

(“いいあんばい”が一番難しい)



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おにぎりさま ★特養 前川紗智子【2010年7月号】

 子どものころ、おかあさんにお弁当のおにぎりを握ってもらっていると、私は、その匂いにやられてしまって、握っている傍から、もう食べたくって食べたくって、結局ひとつ先に食べてから出かけてしまう子どもだった。うちは漁師で、おにぎりは全部が海苔で覆われて塩がたっぷりついているおにぎりだった。
 先日特養に入居されているナツさん(仮名)が、腹痛を訴えて病院に入院した。翌日お見舞いに行くと、検査もあって絶食状態。お腹を空かせていて、「ねぇここの人たちもみんなまだごはん食べてないのよね?」と大部屋の他の患者さんたちもこの飢えをしのいでいるんだ…と言い聞かせて頑張っている感じのナツさんだった。「ご飯まだ?私まだ食べてないの。」というセリフは、普段、特養でも食後のあとたびたび言うナツさんだったのだが、そうした時には、説得してもお互い苦しくなって、苦肉の策でスタッフがお腹の負担にならない程度におにぎりを握って出したりしていた。でも、今日は心も体も本当にお腹すいてるんだもんな…と私は切なくなった。
 お腹がすいてるナツさんには酷な話だったのかもしれないが、「退院したら何が食べたいかな…寿司たらふく食べに行こうか?!」なんて茶化しながら話していると、ナツさんがフッと、ゆっくり語りはじめた。
 「やっぱりね、ご飯。日本人だものね…。私ね、寮みたいな所(特養の事)に住んでるんだけど、そこでは、お腹すいたっていうとね、おにぎり出してくれるの。真っ白なご飯をただお塩で握ってくれたやつなんだけどね。わたしね、あれ食べるとお母さんのこと思い出すの。私のお母さんね、おにぎり上手だったのよ?こんくらいの小さいのふたつ、おやつに出してくれた…。ホントにおいしいの。ただお塩してあるだけなのに、なんであんなにおいしかったのかしらね…」
 …なんとお母さんを思い出して食べてくれていたなんて。感動してしまった。そして、私もお母さんのおにぎりを思い出して無性に食べたくなった。でも、こんな話しを聞いたので心は満腹だった。
 続けて、ナツさんは自分の作ったおにぎりの話もしてくれた。子や孫を育ててきたおにぎりと、それがお嫁さんに伝わっていこうとしている事。「ゴマ塩だけは切らさない様にと思ってやってきたけど、うちの嫁も、最近じゃゴマ塩切らさなくなってきたみたい…」とニッコリ。
 だれかが握ってくれたおにぎりを食べるたび、そして誰かのためにおにぎりを握るたびにきっとこの日の事を思い出すだろう。おにぎりが、魔法が込められているものみたいに妙にキラキラとして見える。お腹だけじゃなく、どこかで心も満たしながら、そしてそれは言葉にならないまま、次の代、またその次の時代へとつながっていくものに違いない。
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ケース会議はスゴイ ★グループホーム第1 西川光子【2010年7月号】

 「フクさん(仮名)なんかこの頃いつもと様子が違う感じがするね」とスタッフが気にかけていたその矢先、フクさんがセッケンを食べてしまった。その出来事をすぐに理事長に報告相談した。まいったと困惑気味のスタッフの様子を見た理事長は「ケース会議をやろう」と言ってくれた。グループホームではケアプラン会議を毎月やっているが、内容はケース会議で、全員の様子を各担当が発表し話し合う。”会議”と名がつけば堅苦しくおっくうなイメージがあるが、里の会議は現場での利用者の細かな様子やスタッフ各々の感じ方などをじっくり話し、聞いてもらう場になっている。つい時を忘れて語り続け、気がついて時計を見てはもうこんな時間とびっくりする事がしばしばだ。
 今回は、フクさんのケース会議を通して、グループホームの現在の状況や最近のグループダイナミズムとそのプロセスを見つめることができた。スタッフのそれぞれの感覚や、利用者とのやりとりや言葉、感じたことなど、細かく話しながら検討していくと、大きな全体が見通せるようになってくる。毎回、行き詰まっていた状況が話しているうちにパッと開けた感じになってくるから不思議だ。
 グルーホーム第1では、昨年から、チーム作りに苦心しており、利用者へのまなざしや、注ぐエネルギーがスタッフ育成の方に幾分偏り気味だったと分析された。それはそれで仕方ないことなのだが、フクさんは「おれもいるぞ。忘れるなよ」という意思表示だったのではないかということがイメージされた。こうした、気がつかなかったことが、ハッと気づいてイメージできると、とたんに世界が変わって行くのがわかる。“見立て”や“この方向性で行こう”とポイントが把握できてくる。そこに至ると、もう次の日からの意欲も湧き、どんな出来事がおきてくるのかとても楽しみになる。この日の会議が終わった直後「もう明日は何か起こるよね」とスタッフ同士で確信を持って話しながら期待をしたのだった。
 ケース会議の翌日、昼過ぎにデイサービスからピアノの音が聞こえてきた。私はピアノの音にひかれて、ミサさん(仮名)を誘ってデイホールに向かった。ピアニスト、ニシノさん(仮名)の見事な腕前で、メドレーで日本の歌が弾かれていた。このジャンルはフクさんも大好きな曲なので、私はあわててフクさんを誘いに戻り、フクさんと私が到着するとちょうど”ウサギ追いしかの山・・・” と故郷の曲が流れていた。実はこの曲は、フクさんが5年前入居された頃、車でドライブ中に二人でよく歌った曲だったので、私たちにとって思い入れが深かった。
 その曲を聴きながらフクさんは、私の目を見ながら涙を溜めウルウルしつつ手拍子している。その後私の手を取ってそのまま長いこと目を閉じ、自分の世界にひたっていた。今日この曲を一緒に聞けたタイミングは単なる偶然とは思えず、私も感無量だった。
 一緒に聞いていたミサさんは、フクさんに「ここに居ましょうよ。ここが一番良い」と話しかけた。フクさんは「ア」とうなずいて返し、ゆったりくつろいでいた。心静かにいろんな思いを共有できたと感じる時間となった。
 ところがその後、グループに戻ると”生活・暮らし”であわただしい別時間も流れている。お部屋の片づけをしようと忙しい歩さん(仮名)が、桃子さん(仮名)の部屋の戸を開けたらしい。部屋に入られるのをひどく嫌がっている桃子さんに「なにしてへるのや!!おめどこでね。行げ!!」と怒鳴られ、歩さんはオロオロしている。いつもならここで大騒動となるところだが、そこにミヤさん(仮名)がやってきて、桃子さんの部屋に平然といすわってしまった。
 桃子さんは「なにしておめまでくるってや、へるな!!行げでば。こごオレどこだ!!」とワナワナするほど怒りまくったのだが「何して、われどこさ入ってわがねってや。こごオレどこだ!!」と自信たっぷりで全く悪びれないミヤさん。あまりの堂々ぶりに事はおのずと落ち着いてしまった。
 ことは日常的に起こるのだが、それがどう解決するかは思いも寄らない収まり方をする。そしてなぜか”ケース会議”の後は、起こることも、収まり方も絶妙に決まってしまうから不思議だ。この様に思いもよらぬ出来事がおこって全体のバランスがとれていく。
 今回のケース会議は一人の人にスポットを当て検討したのだが、全体に深い意味あいを持ってくる。全体で何かが通じ合っているのだろう。「ケース会議ってすごいね!!ほんとにすごいね!!」と改めてスタッフで語り合ったのだが、すごいと思え、予感できる何かが、自分の中に育ってきたのだということに喜びを感じる。
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チエさんとマルカンドライブ ★デイサービス 太田代宏子【2010年7月号】

 チエさん(仮名)は花巻の老舗デパートマルカンが大好きだ。デイサービスでは、いつも、おやつ作りを一生懸命に手伝ってくれるチエさんだが、午後になるとそわそわしてくる。そのうちに鞄を持ってこっそり歩き出すのだ。「どこにいくの?」と聞くと、「マルカン♪」とかわいく微笑みながら小声で教えてくれる。
 マルカンへの思いは2月頃から強くなり、「ここ何階?」と聞いたり、「下に行きます」とグループホーム第一への通路の扉が、エレベーターに見えたりしていて、午後のデイサービスはマルカンデパートと化す。
 6月14日、ついにチエさん念願のマルカンドライブが実現する。チエさんの思いと、利用者6名、スタッフ4名をぎゅうぎゅうに詰め込んで2台の車はマルカンへ向かった。
 道中、チエさんに「今からどこに行くんだっけ?」と尋ねてみるとチエさんは「マルカン♪」とニコニコ嬉しそうにしていた。そして、「ここ行けばマルカンに行けるの?」と聞いてきた。「そうだよ」と答えると、「道覚えたいけど、こういうのあんまり明るくないからねぇ」と困ったような、照れたような笑顔も見せてくれた。そんなことを2人で話をしている間にマルカンに到着。車から降りて、またチエさんに聞く。「ここどこだっけ?」するとチエさんは小さな声から嬉しい気持ちが逃げていかないように、耳打ちで「マルカン♪」と教えてくれる。
 マルカンではそれぞれ好きなものを選んでおやつを食べることになっていた。6階の食堂に到着するとチエさんはきょろきょろと周りを見渡し、ニコニコしていた。ところが、おやつを選ぶ頃になると表情が曇りだした。「みつおさんが、銀行に行ってお金を持ってくるはずだから」とおやつ選びにも集中できない様子。
 謎の人物、みつおさんとはいったい誰なのか。とりあえずおやつを選んでもらう。チエさんは、仕方なさそうに選んだあんみつを食べながらエレベーターの方を眺め、みつおさんの到着を待っている。もちろん、あんみつを食べる手はあまり進まない。それでも大きなプリンパフェを完食し、苦しそうにしているゆう子さん(仮名)を見て「あの人胸がいっぱいで戻さなきゃいいけど」とクスクス笑って、現実の世界に戻ってくることもあった。
 帰りの車の中でも謎の人物の話は続いた。名前はゆきおさんに変っていたが、同一人物らしい。「確かに、200〜300円は入ってたの」、「あの人、奥さんも子どももあるのにそんなことするわけない」と話す。
 この謎の人物は、朝、送迎車でチエさんを迎えに行き、家族さんからおやつ代を預かった男性スタッフのことではないかと私は感じた。実際は奥さんと子どもはない人だったが間違いないと思った。デイサービスに戻り、ご対面「この人でしょ?」と聞くとチエさんはゆっくり頷いた。「さっきのあんみつはこの人から預かったお金で買ったんだよ」と説明するとぱっと表情が明るくなり、納得してくれた様子だった。
 チエさん、待望のマルカンドライブはみつおさんとゆきおさんに振り回されてしまったが、チエさんは満足してくれたようで、その後マルカンに行きたいとほとんど言わなくなったので、すこし寂しい気持ちもする。デイサービス1年生の私は、これからも里のあたたかく、やわらかい雰囲気の中で利用者さん一人一人の世界にどっぷり浸りたいと改めて感じている。
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今月の一句 ★グループホーム第2 鈴木美貴子【2010年7月号】

・ナナだって 掃除をすれば ありがたい さぱっとすれば おおワンだふる

・重いけど 実れば嬉しい この思い キュウリを穫って 洗って食べる 
 

 GH2では犬のナナを飼っている。犬小屋の周りをいつも掃除してくれているクミさん(仮名)。クミさんは犬小屋の周りに落ちた葉を箒で掃いてくれる。「人居るのに汚くしてたら誰も住んでないみたいだから」「さぱっとしてたらいいんだおんや」と頑張っている。この日は犬小屋の周りを掃除した後、GH2の裏の畑のキュウリを収穫した。「ほーなってた、なってた。買えば高いんだよ」とにこにこで収穫してくれるクミさん。キュウリを洗いながら「おいしんだよ、これ」と満面の笑み。
・願いつつ 考えてみる 願い事 あなたの思いを 書き付けながら
 

 コラさん(仮名)に「願い事考えた?」と聞いてみると「誰にも聞かれないから考えてない」と言う。「んじゃ、考えてて、私書くから」と部屋を出る。数分後、コラさんが呼ぶ。「書いてでけで」と。「“歳をとっても 忘れられない 七夕祭り”」とコラさんらしい文。「すごいコラさん。もう考えたの」と私が言うと「たいもんなんだもん!」とコラさん。そして、「願い事忘れないでください」と言った後に「おかしくねがべが?」と気にするコラさん。「たいもんなんだもん!」と言いながらも気にするところがコラさんらしいなと思った。聞くことで出てくる思いを書き留める。自分にも耳を傾け、思いを書き留めておきたいと思う。私の願い事は・・・・・。 

※「たいもん」:たいしたもの、すごいの意味
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しそジュースづくり ★ワークステージ 日向菜採【2010年7月号】

 5月下旬、私は秋子さん(仮名)に誘われ、ハウスで栽培しているしそを使ってしそジュース作りに挑戦した。私がワークステージにきてから約1年経つが、秋子さんとは朝夕の送迎でしか接点がなく、ほとんど話をしたことがなかった。けれども、この頃どこか私を意識してくれているのか、「しそジュースいっしょに作ろうね」と誘ってくれたので嬉しくなった。
 しそジュースはかつて銀河の里の人気商品で、私が銀河の里に来る以前からレシピは完成されており、商品としても売られていた。ワークステージの歴史のひとつでもある、このしそジュースを、利用者の秋子さんから伝授されることに、私は里の歴史を担う使命を感じて緊張した。
 そのジュース作りの初日。秋子さんは自分でメモしたレシピを見ながら、手際よく準備していく。大きなボール2つ分の大量のしそを白い布の袋につめる。それを、クエン酸とお湯が入った鍋にいれ沸騰させる。すると、みるみるうちにきれいな赤紫の色になり、しそのいい香りが漂ってきた。私はその色の変化に感動し、理科の実験をしているような気分になる。秋子さんは少し得意げな様子で「きれいでしょ」と笑顔で話す。
 ジュースを冷ましているときに、秋子さんが「やっぱり最初は大葉の責任者に飲んでもらわないとね」と、大葉ハウス担当の関さんに飲ませたいと提案してくる。さっそく関さんを呼び、記念すべき一番絞りのしそジュースを試飲してもらう。もちろん味はバッチリで3人の気分はウキウキ。「炭酸で割ったらおいしいよ」とか「ゼリーも作ってみたい」「夏祭りで売りたいね」など、いろんなアイディアが出てきて盛り上がった。その日作ったしそジュースはワークのみんなに飲んでもらったが、なにせ2年ぶりのしそジュースとあって、みんなで興奮しながら味わったのだった。
 6月にもう一度作ったのだが、そのとき秋子さんから「里売りしたい」という要望が出た。「みんなに飲んでほしいんだ」と話す秋子さんは、今まで見たことがないくらい、いい表情をしていた。他にも「あの人とも作りたい」「しそ茶作ったよ」など、しそジュースをきっかけにいろいろ話しかけてくれ、私と秋子さんとの新たな関係も築かれていっていることを実感した。
 今年の秋、今まで6年間栽培してきた大葉は生産中止となり、小ねぎ栽培へと移行する予定だ。秋子さんがしそジュースを作りたいという想いは、大葉栽培が終わってしまうことの寂しさや何か残したいという気持ちからなのかもしれない。そういった想いもあり、8月に行われる夏祭りでは、このしそジュースを販売することにしている。どのように秋子さんと準備し販売していくか、夏祭りに向けてワクワクしている。
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お中元商戦2010 ★ワークステージ 米澤充【2010年7月号】

【お中元の由来】
 今年もワークステージ惣菜班の生命線とも言える、重要なお中元商戦の時期が訪れた。お中元について調べてみると中国三代宗教の1つ道教に由来する罪をつぐない神を祝う行事の中元と、日本古来の祭りごと御霊祭における贈答習慣に、伝来した佛教の盂蘭盆会(うらぼんえ、今でいうお盆)の時期が重なり、お中元の贈答が行われるようになったという話しである。現在ではお世話になった方々への日頃の感謝を込めて贈り物をする行事へと派生した。
 私は銀河の里の餃子・焼売セットを贈り物として購入するまでお中元やお歳暮といった行事には無関心で、贈った事も贈られた事もなかった。若い人にとってあまり馴染みがない行事なのかもしれないが、親戚や友人との関りが薄くなっている現代においては、お中元・お歳暮は意識的に関わりをつくる役割としても面白いように感じる。

【里のお中元戦略1・・・商品開発】
 昨年のお中元商戦から企画、パンフレット作成、お客様対応、在庫管理、発送作業といった一連の作業に関ってきたが、今回のお中元では食品加工場の開設、授産施設から就労継続支援B型事業への移行、お肉なしのヘルシー餃子の完成といった事もあり、新たな「挑戦」のお中元でもある。
 障害者自立支援法の移行に合わせ今年4月にワークステージの食品加工場が開設され、製造環境や体勢は整い、メディアにも紹介され惣菜事業にとって追い風になるかと思われたが、販路も皆無に等しく、さらに24時間空調、大型冷蔵・冷凍庫を整えた大きな加工場のため工場のランニングコストがかなりかかり、開設早々ワークステージの経理は火の車である。この状態をお中元・お歳暮企画で何とか回復したいと職員、利用者ともに意気込んでいる。
 ヘルシー餃子の完成に至るまでは、構想から含めると1年以上も考え続けてきた商品で、今回のお中元セット内容に含めたかった。そのためセット内容を決定すべく6月までの3ヶ月間は毎日のように試作品を食べた。おからこんにゃくのパサパサ感や食感に悩んだが、なんとか完成して、本当の肉が入っていると思うほど、クオリティの高い餃子に仕上がったと自負している。

【里のお中元戦略2・・・パンフレット】
 毎度ながらパンフレット作成にいつも頭を悩ませる。参考にしようとコンビニや郵便局に置いてある有名デパート店等の「2010お中元ギフト」と書かれたカタログを手にとって見てみるが、そこには商品名、値段、商品イメージ、2行程度の商品説明文など必要最低限の情報しか書かれておらず、掲載デザインの統一感を図っているためどれも同じように見えてしまう。また、カタログは各商品の宣伝・広告もかねているわけで、おそらく広告料に合わせた掲載ページ数やサイズの違い、順番等が決まっているんだろうなぁと商売的な部分を感じて、純な感謝の思いが薄まってしまうようで残念な気持ちになった。
 福祉の商品はともすると、お情けで買ってもらうようなことも多々ありがちだが、私たちが目指すのは、ワーカーさん達の個性を付加価値として発見し、モノを通じて新たな人と人との関係を紡ぎ出すような、貨幣価値の商売の枠を超えた、関係性の創造に重きを置きたい。地元の食材を使用し、ワーカーさんが手作りで作った食品である事を伝えるため、パンフレットには餃子レンジャーを全員紹介し、作業風景や工場内部の写真を掲載した。

【ご協力よろしくお願いします】
 ワーカーさん達もやる気で、七夕の短冊にも「今年も銀河の里お中元ギフトが売れますように」や「餃子と焼売の機械に皮を早く乗せる事ができますように」と書かれていた。
 お中元商戦は始まったばかり。販売目標800セット完売に向けて、みんな一丸となってがんばっています。 ※ご注文の受付は8月15日まで。
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今年の新人研修 ★理事長 宮沢健【2010年7月号】

 昨年は特養が開設になるというので、30名を採用し1ヶ月をかけて新人研修をおこなった。ところが1年過ぎてみれば、大半が辞めてしまって、当時研修を受けた人は数人しか残っていない現状だ。確かに福祉施設の定着率は悪く、だいたいこんなところだろうとは思うが、それにしても研修の労力と費用を考えるとなんと無為なことをやっているのかと落ち込んでしまう。立ち上げ一年目はまさに激闘で、無我夢中のうちに過ぎ去ったのだが、まだまだ立ち上げ途中で完成率20%といった程度だろう。
 そうはいうものの、2年目は、昨年とは全く違った様相で展開しているのも間違いない。若いスタッフや新しい人材が増え、経験や技術はないながら、どこか息吹が感じられる。まだまだ、あちこちでぬけぬけでぼろぼろではあっても、未来へのいい感じが予感できる空気がはっきりと出始めている。
 今年も研修をしたいのだが、24時間体制、年中無休の現場を動かしながらその合間にやるしかないので、昨年のように全員まとまった形での開催は半永久的に望めない。何人かずつ順次時間をかけて研修をするしかない。どうせなら座学ではなく、出かけて見聞を広めながらやりたいということで、今年の研修第一弾は、東京でちょうど上演されていた、ドイツの舞踏団ピナバウシュの「私と踊って」を見に行くことにした。
 ピナバウシュ舞踏団が2年前に来日上演したときNHKの川村さんからチケットをいただいたのがきっかけで、「パルレモ、パルレモ」を職員が見たのだが、なんともいえない不思議な感覚がわき起こってくる感じだと言うので、急遽二部構成で上演された、後半の「フルムーン」を私も見に行った。パルレモは徹底的な破壊、破壊で「もうやめて」と叫びたくなるという職員の感想だったが、フルムーンはその名の通りエロスの神髄という感じで、滝が落ちるような大量の水の流れる舞台で、ダンスが展開され命の湧き出る感じが伝わってくる、見る者の心を直接揺るがすような表現に度肝を抜かれた。
 ピナバウシュという人は、現代社会において失われた人間の命の全体性を取り戻そうという戦いをやってきたのだと感じた。我々が現場の使命と感じていることと同じ仕事に挑戦している同志にちがいないと思った。そしてこのとき、最後列の席だったのだが、なんと隣の席にピナ本人とその付き人が座ったのだった。私の隣に付き人でその向こうがピナ。姿勢のいい背の高い女性が厳しい目で睨むように舞台を見ていた。鋭い迫力があった。
 残念ながらピナは昨年亡くなり、今回の来日は追悼公演でもあった。ただ本人がこの「私と踊って」の日本上演を決めたとのことだった。ドイツでの初演は77年というから、ほとんど初期の作品ということで、ピナ本人の思い入れもあったのではなかろうか。
 研修は2日に別れて、計12名が参加したのだが、それぞれ深い心の揺らしにあっているという感じだった。最初から涙がでて最後まで泣きっぱなしだった人や、目眩を感じながら、見終わったその日は口をきけなかった人など様々だが強い反応だった。
 システム化された社会で制度に絡みとられ、便利で快適な日常を過ごしながら実感を失って、感情と知性との交流が断絶した失感情や、身体感覚と知性の交流が途絶えた失体感、自然への感覚、感性が鈍磨する失自然といった症状を乗り越えるべく、舞踏の世界で挑戦し実践したのがピナの活動だったように感じる。私の個人的な勝手な思いながら、ここにも同志はいたと思うとまた勇気が湧いてくる。ピナを見た、若い職員スタッフもそれぞれ大事な何かを感じてくれたように思う。
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「伝わって繋がって」父母の日会 ★グループホーム第2 佐々木詩穂美【2010年7月号】

 今年の父母の日会はGH1との合同で、利用者、ご家族、里のスタッフ、総勢約50名がデイホールに集まった。会の準備に利用者とご家族が一緒に昼食のおにぎり作りで、和やかなイメージの予定だったのだが、当日の朝は会場作りにおわれて、和やかにどころではなくなってしまった。「おにぎりできないかも‥」と危惧したが、いつもイベントに参加してくれる豊子さん(仮名)の娘さん達が、勢いよくおにぎり作りをしてくれた。おまけに豊子さんのひ孫さんが元気な男の子でムードメーカーになり、できたおにぎりやごちそうを一緒に運んでくれ、大助かりだった。
 バタバタのなか、ご家族の皆さんに支えられて会が始まった。自己紹介では1人1人の思いが伝わってくる。ご家族からは「助かっています」という感謝の言葉が多く、私達スタッフからは「楽しいです」の言葉が多かった。思いが込み上げて言葉にならず涙ぐむスタッフもいた。大変なこともあるけれど、利用者との関係でいろいろなことを経験している毎日はスタッフにとっても意味深い事に違いない。
 昼食後、大人数だったので全員ではなかったが、外に出てプランターや花壇に花の苗を植えた。ここでも豊子さんのひ孫さん大活躍。「僕もやりたい」と花を植える姿は利用者達の目にとまり、「かわいいね、かわいいね」とみんな微笑んでいた。
 同時にホールの中ではもうすぐ七夕ということでご家族と一緒に短冊を書いた。豊子さんの娘さんは、豊子さんの手をとって願い事を短冊に書きながら、「お母さんは願い事ありすぎて叶わないかも〜」と娘さん達。いい雰囲気にみんなが集まって笑った。
 そのあと、利用者の皆さんに担当スタッフからプレゼントカードを渡して、みんなでカードの写真をみたり、カードに書かれた思い思いの言葉を読みながら微笑ましい時間が過ぎていった。
 最後に全員で集合写真を撮った。これも全員がおさまるまで大騒ぎだったが、見事に全員集合。「こっち向いて〜」と大賑わいの記念撮影になった。 “支えたい”の気持ちはいつも“支えられて”になって繋がる。


 みんなの“ありがとう”が伝わりあう父母の日会だった。
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