花巻に越してきて2年目。2回目のまちかど美術館だ。このイベント自体は今年で3回目。だが、花巻に越してくるまでこんな素敵な催しがあることを私は知らなかった。もっとも、私がアートに対して興味を持ち始めたのもここ2年くらいのことだからでもある。
以前はアートはよくわからないなと思って、近づいてみることもなかった。でも、その“わからない”←何かを理解しようと意識で迫るような向き合い方から離れ始めたら、アートがとたんにおもしろくなりだした。面白く感じる契機は、銀河の里との出会いにあった様に思う。里での利用者との関わり方は、操作しようとするのではなくて、まず相手がどんな状態なのかを一緒に過ごして感じたり、味わうようにゆったり構えるゆとりから始まる。そういう味わい方は、アートとぴったりと似合うように思う。どう感じるかに正解があるわけではない。作者の表現は一つの作品になって、あたかも完結して存在するみたいにそこに展示されているけれど、でも「作品」はそれでお終いではなく、その作品を鑑賞に訪れた誰かと出会って、その間の物語につながっていく。向き合う人とその作品との間に、どんな感情が生まれて、その人がどんな思いをその作品に重ねるのか…、それは一人ひとり違って、だから、向き合う人の数だけ、何通りもの世界の広がり方がある。そういう風に考え出したら、気負わなくなった。楽しくなった。でも、このことは、アートに限らずに、全てのことにつながっているとも思う。ホントは1つしかないようで、1つではなくて、どれもほんとう。
今年は、Advanceということで、以前までの自由参加型ではなく、選抜のアーティスト5名による、また新しいまちかど美術館。色、フォルム、質感、音、動き、リズム、意味としての文字、縛りから開放された地としての字、生々しさ、佇まい……。でも、まち全体が作り出すあの不思議な空気は変わっていない。まちを歩いていても、行き交う人となんとなく会釈して通り過ぎる。子どもたちがいっぱいいて、みんなわくわくしたようないい顔していて、思わずこっちもわくわくする。時には一緒に遊ぶ。ちょうどハロウィンのパレードもあって、仮装姿がかわいかったからお願いして写真を一枚撮らせてもらった。まちを歩いていると、なんだかこう、なつかしいような気持ちになる。別にここで生まれたわけではないのだけれど、きっとこうした人のつながり方がなつかしいんだと思う。まちかど美術館の空気が、まちにより一層一体感を持たせて、訪れた人たちもみんな巻き込んで、近くてあったかかった。
私が訪れた日には、マリンバのコンサートもあった。料亭「小桜家」さんの二階、昔を感じさせる広間を使って、田中館靖子さんのマリンバ。あのじんわりと満ちてくる音と、窓のそとから風でさらさら言ってる木の葉の 音が重なって,なかなかなか味わいのある体験だった。そして、そのコンサートはプリン同盟のプリン付き!会場でたまたま 会った知り合いや、またまったく見知らぬ人とも机を囲んで、同席の子どものかわいらしい 姿にみんなでわらいながら食べるプリンもまた、おいしかった。
なにもかもが、他では味わえない新しさ、だけどそれでいて懐かしい。約60箇所の会場、回りきれなかったし、もう一度行きたい場所、見たいステージもある。25日の最終日まで、また何度も足を運びたい。